芸術学部版画コース卒業生の鮫島ゆいさんによる個展「反復と変容の総和」が、東京渋谷のMAHO KUBOTA GALLERYで開催されます。
鮫島さんは、2010年に京都精華大学版画コースを卒業。現在も京都を拠点に活動し、「見えるものと見えざるものをつなぐこと」をテーマに制作を続けています。作品では、古代の祭りや神事に用いられる多様な道具やモチーフを断片的に描き、それらを組み合わせて絵画として表現する独自のスタイルが特徴です。これまでに個展を開催するほか、多数のグループ展に参加。さらに、今年3月に開催された「VOCA展2025 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」では、VOCA佳作賞を受賞し、多方面から注目を集めています。
本展覧会では、大小14点ほどの新作ペインティングが発表されるとともに、VOCA展に出品された作品も展示されます。鮫島さんの作品は、シェイプド?キャンバス(変形キャンバス)を支持体とし、抽象的で独創的な世界観を表現しています。作品に描かれるモチーフは、儀式的な道具やオブジェのような形状を持ちながらも、具象的な「対象」としてではなく、抽象的な言語のように作品同士を緩やかに結びつけています。また、鮫島さんが用いる色彩は、黒を基軸としながら中間色を巧みに活用した独特のバランス感覚によって、作品にさらなる深みと魅力をもたらしています。東京での初の本格的な個展となるこの機会に、ぜひ鮫島さんの世界観に触れてみてください。
アーティストステートメント
私たちは世界のすべてを直接捉えることはできず、五感を通じた断片的な情報をもとに、それぞれの主観的な世界を構築している。ゆえに知覚とは、目に見えるものの単なる集積ではなく、断片を結びつけることによって現象が絶えず生成される働きそのものといえるだろう。
本展では、絵画という固定された時間と空間の枠組みの中で、「反復」とその中で生じる「変容」に焦点を当てる。反復とは、対象を繰り返し観測する過程でありながら、単なる同一性の再生ではなく、わずかなズレや変化によって新たな視座が開かれていくものである。その更新は、こうした微細な差異が積み重なることで生じる。
出品作は、知覚を分解し再構築するキュビズムの方法論と、シュルレアリスムが偶然性を通じて超越的な瞬間を捉えるアプローチを軸に、現象学的な観測を通じて「見えない存在」に問いを投げかける。そこに描かれるものは、身体を通じて捉えられた現前的な形象と、すでに過去のものとなりながらも断片として現在に残る存在が交錯する場であり、鑑賞者の解釈によって補完されることで、その「総和」が立ち現れる。
この作用は、作品の成り立ちにも深く関わっている。言葉を介さない身体的な観測を出発点とし、身体が発する、意識を超えた言語を誠実に翻訳することで、言葉の枠組みに収まりきらない未知のものへと開かれていく。その過程の中で、作品は単なる視覚的な対象を超え、時間的にも空間的にも拡張しうる場所となり、鑑賞者との関係を通じて絶えず変容し続ける。
知覚とはつねに不完全であり、私たちは仮説的に世界を構築しながらそれを更新している。しかし、その不完全さこそが新たな想像を促し、「見えない存在」を示唆する契機となる。知覚の様式や感覚の枠組みそのものが流動化している現代において、本展が私たちの「見る」行為のあり方を問い直し、存在の輪郭を探る界面として機能することを願う。
鮫島ゆい
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日程
2025年5月15日(木)?6月14日(土)
休廊日 日?月?祝日 -
時間
12:00~19:00(最終日17:00まで)
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会場
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-4-3 -
出演?出展者
鮫島ゆい(芸術学部版画コース 卒業)
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予約
不要
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料金
無料
関連イベント
鮫島ゆい×保坂健二朗 (滋賀県立美術館ディレクター)トークイベント
鮫島ゆい個展の関連イベントとして、ゲストに滋賀県立美術館ディレクター?保坂健二朗氏をお迎えし、鮫島ゆいとのトークイベントを開催します。
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展覧会で発表する新作の背景や制作のプロセスについて触れる貴重な機会となりますので、ぜひご参加ください。
対談:鮫島ゆい×保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター)
日時: 2025年5月18日(日)15:00?
会場: MAHO KUBOTA GALLERY(東京都渋谷区神宮前2-4-7 1F)
お問い合わせ先 CONTACT
京都精華大学 広報グループ
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