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5月12日(木)アセンブリーアワー講演会「『竜とそばかすの姫』ができるまで─映画を通して今、伝えるべきこと(ゲスト:細田 守氏)」レポート

アセンブリーアワー講演会は、京都精華大学の開学した1968年から行われている公開トークイベントで、これまで54年間続けてきました。分野を問わず、時代に残る活動や世界に感動を与える表現をしている人をゲストに迎えています。
 
2022年5月12日(木)は、『サマーウォーズ』や『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』といったアニメーション映画作品を手掛けてきた細田守監督をゲストに迎え、アセンブリーアワー講演会を開催しました。題は、「『竜とそばかすの姫』ができるまで─映画を通して今、伝えるべきこと」。2021年に公開された最新作の制作秘話をはじめ、アニメーション映画の可能性やこれからの表現についてなど、多岐にわたるテーマを学生たちに向けてお話いただきました。また、聞き手はマンガ学部教員の吉村和真が務めました。
 
※本イベントは、学生?教職員のみ学内会場で聴講可とし、学外?一般の方にはオンラインで公開しました。

「『竜とそばかすの姫』ができるまで─映画を通して今、伝えるべきこと(ゲスト:細田守)」講演会レポート

2021年、第74回カンヌ国際映画祭に新設された「カンヌ?プルミエール」部門に日本映画として初めて選ばれ、世界初上映された『竜とそばかすの姫』。上映後には10分以上にわたって拍手と歓声が鳴り止まなかったように、海外でも高い評価を受けています。
 
物語の主人公は、17歳の高校生?すず。幼い頃に経験した母の死をきっかけに好きだった歌を歌うことができなくなったすずですが、インターネット上の巨大な仮想世界〈U〉では自然と歌えることに気づき、歌姫?ベルとして世界中で人気を博すことに。そして、〈U〉のなかで乱暴をはたらく謎の「竜」に出会ったベルが、竜の傷ついた心を知り、竜を救おうとする──というストーリーです。
この『竜とそばかすの姫』の発想の起点となったのは、ディズニーによるアニメーション映画『美女と野獣』(1991年)。この作品が公開されたのは、細田監督が東映アニメーションに入社して1年目のとき。「自分はこのままアニメーションの仕事を続けていけるのだろうか」という迷いを抱えていたと言いますが、それまでのディズニー作品よりも圧倒的に表現が洗練された『美女と野獣』を観て、「こんな映画ができるんだったらアニメーションを続ける価値がある」「いつか自分なりの『美女と野獣』をつくろう」と決心したそうです。
 
この決意から実に30年を経て制作された『竜とそばかすの姫』。『美女と野獣』は18世紀のフランスで生まれた物語ですが、今回、選んだ舞台は現代のインターネット空間。細田監督は、「野獣は暴力的な外見だけども心は優しいという二重性があります。一方、インターネットには現実の自分とは別の自分が出てくるという二重性がある。このふたつの二重性がうまく響き合うのではないかと考えました」と言います。
また、制作において重要視したのが、「グローバルなスタッフと一緒につくる」ということ。才能が開花するメタバースの世界を映像で表現するために、世界中のさまざまな人たちと一緒につくりたい。この思いのもとに、『アナと雪の女王』などディズニー作品で数々のキャラクターデザインを手掛けてきたジン?キムや、新進気鋭のイギリス人建築家であるエリック?ウォンといった世界的クリエイターが集結しました。さらに、『竜とそばかすの姫』の制作には京都精華大の卒業生も参加。すず/ベルの声と歌を担当したミュージシャンの中村佳穂さんは人文学部出身、キャラクターデザインを務めた画家?イラストレーターのイケガミヨリユキさんはマンガ学部出身です。
この“縁”について、細田監督は「あらゆるオーディションをやって、そのなかで京都精華大から2人も入っているって、これはすごい確率。『京都精華大ってどんな大学なんだ?』って思うでしょ」とコメントし、聴講する学生に向かって「どんな大学なんですか?」と尋ねる場面も。また、「京都精華の学生たちの声を聞いてみたい」という細田監督の申し出により、講演会の翌日には監督と在学生とが対話する場が設けられました。
このように、世界中の、アニメーション分野にとどまらないクリエイターとともに作品をつくり上げた細田監督。いまは動画の配信サービスの普及により、住んでいる国?地域や言語、宗教などの垣根を超えてアニメーション作品が世界中で楽しまれていますが、「受け手がこれだけグローバルになっている以上、作り手もグローバルに、いろんな人たちとつくっていくべき時代なのではないか」と提唱し、その上で「自分自身が持っているパーソナルな面をどれだけ正直に表現するか。それが住んでいる場所や言語、宗教の壁を超えるものであると思う」と語りました。
「一人ひとりが感じ、切り取る世界があるかぎり、その人の数だけ作品はできる。それをどれだけ突き詰められるか。どれだけその真実に迫れるか。まだまだ表現されるべきものがたくさんある」。アニメーション表現の拡張の先頭に立つ細田監督の熱の込もったメッセージは、未来のクリエイターとなる学生たちを大いに勇気づけるものとなりました。

細田監督、このたびは貴重なご講演をありがとうございました。

5月13日(金) 細田監督と京都精華大生との座談会

本講演会の翌日に開催された細田監督と京都精華大生との座談会の様子を、本学公式noteにて掲載しています。こちらもあわせてご覧ください。

京都精華大学 公式note
  【のぞき見】アセンブリーアワー講演会追加特別企画 !「細田守監督との座談会」(5月18日公開


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